ToDoリストの項目が30も40も並んでいて、何から手をつければよいのか分からない。締切が迫っているのは分かるのに、つい目の前の小さな雑務から片付けてしまう。そんな悩みの正体は、たいてい「優先順位 付け方」の問題です。
タスクが多いこと自体は、ある程度避けられません。問題は、限られた時間とエネルギーを、本当に成果につながるタスクに配分できているかどうかです。この記事では、世界中で長く使われてきた4つの優先順位付けの方法を、具体例とともに解説します。
紹介するのは、アイゼンハワー・マトリックス、ABCDE法、MoSCoW、MIT(Most Important Tasks)の4つです。それぞれに長所と向き不向きがあり、組み合わせて使うのも有効です。
なぜ優先順位が大切か
優先順位を付けないままタスクを進めると、必ず起こるのが「もったいない時間」の発生です。重要でない作業に午前中の集中力の高い時間を使ってしまい、本当に大事な仕事は疲れた夕方に回す。この入れ替えだけで、1日の成果は大きく変わります。
日本のビジネス文化には「段取り八分」という言葉があるとおり、事前の組み立てが結果の8割を決めるという考え方があります。優先順位 付け方は、まさにこの段取りの中心にあります。何を先にやるか、何を後にするか、何をやらないか。この三つを朝のうちに決めるだけで、1日の質は劇的に変わります。
また、優先順位を明確にすることは、断る力にもつながります。すべての依頼を「とりあえず引き受ける」のではなく、「これは今週は難しい」と伝えられるようになるためには、自分の中の優先順位が言語化されている必要があります。
方法1:アイゼンハワー・マトリックス
アイゼンハワー・マトリックスは、タスクを「重要度」と「緊急度」の2軸で分類する方法です。アメリカ第34代大統領のドワイト・アイゼンハワー氏の言葉「重要なことは緊急ではなく、緊急なことは重要ではない」に由来します。
タスクは次の4つの象限に分類されます。
第1象限:重要かつ緊急 今すぐ取り組むべきものです。締切が迫った重要な仕事、トラブル対応、健康上の緊急事項などが該当します。
第2象限:重要だが緊急ではない 計画的に時間を確保すべきものです。長期的な学習、健康管理、人間関係の構築、戦略的な企画立案などが当てはまります。この象限に時間を割けるかどうかが、長期的な成果を分けます。
第3象限:緊急だが重要ではない できれば人に任せるか、シンプルに片付けるべきものです。鳴り続ける通知、形式的な会議、他人の都合の割り込みなどが多くここに含まれます。
第4象限:重要でも緊急でもない 基本的にやらないほうがよいものです。だらだら見るSNS、目的のないネットサーフィン、惰性で続けている習慣などです。
アイゼンハワー・マトリックスのコツは、「第2象限の時間をどう確保するか」を毎週意識することです。緊急ではないが重要なことに、意識して時間を投資してください。
方法2:ABCDE法
ABCDE法は、生産性研究家のブライアン・トレーシー氏が提唱した方法です。タスクを重要度ごとに5段階のラベルに分類します。
A:必ずやらなければならないこと やらない場合に深刻な結果を招くタスクです。締切のある主要業務、約束した重要な仕事などが該当します。A同士の中でも順位を付けるためにA1、A2、A3のように細分化します。
B:やったほうがよいこと やらないと多少の支障があるが、致命的ではないタスクです。Aがすべて終わるまでBには手を出しません。
C:やってもやらなくてもよいこと やると気分はよいが、やらなくても誰も困らないタスクです。机の整理、軽い情報収集などです。
D:人に任せられること(Delegate) 自分でやらず、他の人に依頼できるタスクです。委任することで、自分はAに集中できます。
E:消去すべきこと(Eliminate) 習慣で続けているが、本当はもうやる必要がないタスクです。思い切ってリストから外します。
ABCDE法の最大の強みは、「Eを作る」発想です。やるべきことを増やすのではなく、やらないことを増やす。これはまさに「もったいない時間」を減らす考え方そのものです。
方法3:MoSCoW
MoSCoWは、もともとソフトウェア開発のプロジェクト管理で使われてきた優先順位 付け方です。タスクや要件を次の4つに分類します。
Must(必須) これがなければ目的が達成できないというタスクです。妥協できない核となる項目です。
Should(推奨) できれば含めたい、価値の高いタスクです。MustほどではないがSh重要度は高いです。
Could(あれば良い) 余裕があれば取り組みたいタスクです。優先順位は低めです。
Won’t(今回はやらない) 明示的に「今回はやらない」と決めるタスクです。完全に捨てるのではなく、「次の機会に検討する」というニュアンスを含みます。
MoSCoWの良いところは、Won’tを明示する点です。日本の職場では、「やらないと決める」ことに苦手意識を持つ方も少なくありませんが、Won’tを言語化することで、有限の時間を守れます。プロジェクト単位や週単位の計画にも応用できます。
方法4:MIT — Most Important Tasks
MIT(Most Important Tasks)は、その日の朝に「今日絶対にやり遂げる重要タスク」を1〜3つだけ選ぶ、極めてシンプルな方法です。
ルールは2つだけです。第一に、MITは1日に最大3つまで。それ以上選ぶと、何が本当に大事だったのか分からなくなります。第二に、MITは他の作業より先に取り組む。会議の合間や夕方ではなく、午前中の最も集中できる時間に処理します。
複雑な分類が苦手な方、または上記の方法を試して挫折した方に特におすすめです。手帳の今日のページに「今日のMIT」と書き、3行だけ書き出す。これだけで1日の質は変わります。日本の手帳文化にも自然に溶け込む方法です。
ToDoリストそのものの作り方は、ToDoリストの作り方の記事で詳しく解説しています。
自分に合う方法の選び方
4つの方法には、それぞれ向いている場面があります。
アイゼンハワー・マトリックスは、長期的なバランスを見直したい時に向きます。今、自分が第1象限ばかりに時間を使っていないか、第2象限の重要事項を後回しにしていないかを点検したい場合に有効です。
ABCDE法は、目の前のタスクリストを今日中に処理したい時に向きます。リスト1つ1つにラベルを付けるだけで、迷いが減ります。
MoSCoWは、プロジェクト単位、週単位、月単位など、ある程度のスコープがある計画に向きます。チームでの認識合わせにも使いやすい方法です。
MITは、日々の運用としては最もシンプルで、習慣化しやすい方法です。他の方法と組み合わせて、最後の絞り込みに使うのもおすすめです。
迷ったら、まずMITから始め、慣れてきたらアイゼンハワー・マトリックスを週次で取り入れる、という段階的な導入が現実的です。優先順位とワークフロー全体を整えるなら、GTD(Getting Things Done)の考え方も合わせて学ぶと、視野が広がります。
1日の優先順位ルーティン
優先順位は、方法だけ知っていても運用できなければ意味がありません。1日の流れに組み込む簡単なルーティンを紹介します。
朝5分:MITを決める 仕事を始める前に5分だけ手帳やノートを開き、今日のMITを1〜3つ書き出します。前夜のうちに決めておくのも有効です。
午前中:MIT中心 集中力の高い午前中は、MITに優先して取り組みます。メールやチャットは、可能であれば9時台は閉じておきます。
昼休み後:短い見直し 午後の最初の3分で、午前中の進捗を確認し、午後の優先順位を微調整します。これは反省(hansei)の小さな実践でもあります。
夕方5分:今日の振り返り 仕事を終える前に、今日のMITが達成できたか、明日のMITは何か、を考えます。これだけで翌朝のスタートが大きく変わります。
このルーティンは、合計しても15分程度です。日々の改善(kaizen)の習慣として組み込めば、長期的な仕事の質が確実に変わります。時間術の幅を広げたい方は、時間管理の方法も参考になります。
優先順位付けでよくある失敗
最後に、優先順位 付け方でつまずきやすいポイントを整理します。
第一に、「重要」と「緊急」を混同してしまうことです。緊急なものほど目につきやすく、つい先に手を出してしまいますが、緊急なタスクが必ずしも重要とは限りません。重要かつ緊急でない第2象限の時間を、意図して確保することが大切です。
第二に、優先順位を付けるのに時間をかけすぎることです。完璧な順序を求めて30分悩むくらいなら、3分でざっくり決めて行動に移したほうが、トータルの成果は大きくなります。優先順位は完璧でなくても、無いよりずっとましです。
第三に、「やらないこと」を決めないことです。ABCDE法のEや、MoSCoWのWon’tのように、明示的にやらないことを書き出さなければ、リストは増える一方です。
第四に、優先順位を朝に決めたきり、1日中見直さないことです。状況は午前と午後で変わります。短い見直しを午後の頭に挟むだけで、「ずれ」を早く修正できます。
第五に、自分以外の人の優先順位を、そのまま自分の優先順位として引き受けてしまうことです。報連相を丁寧に行いつつ、自分にとって本当に優先すべきものは何かを、自分の言葉で考える時間を確保しましょう。
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